村田はるせ(言語・文学班) セネガル 2016年12月6~23日

セネガルを含む西アフリカの旧仏領諸国では、いまも公用語がフランス語で、教育言語もフランス語です。出版物の多くもフランス語で書かれています。私はこのような地域で国内出版された絵本に関心をもっています。じつはこの地域の諸国では独立以来、流通する本の90%はフランスやカナダからの輸入です。子どもは本のなかで、西洋の世界とそこで暮らす白人の子どもの物語を読んできたのです。それでも1990年代以降には、小規模な出版社が各国に誕生し、アフリカの子どもが「ここにはわたし/ぼくのことが書かれている」と思えるような本を出版するようになりました。

しかし本は高価で、一般の人にとってはいまだに贅沢品です。このため本の市場は小さく、小規模出版社は資金難に苦しんでいます。セネガルの出版社に尋ねると、本の印刷を北アフリカやアジアの国々で行うと費用が抑えられ、本の価格も下げられるということです。けれども、出版産業を育てるなら国内の印刷会社を犠牲にすべきでないとして、これに反対する出版社もあります。また出版社は協会を作り、出版促進のための政策をとるよう政府に迫っています。求めているのは、現在フランスなどの出版社が独占している初等・中等教育教科書市場の一部を国内出版社に配分すること、出版用の紙やインクを輸入した際の関税を廃止すること、出版社向けの補助金の運営の透明化などです。

セネガルでは、子どもの読書環境を整えようとする活動も目にしました。首都ダカールの住宅地にある小さな書店は、無料で貸本をしています。そこでは、そろえてある貸本をたちまち読みつくす子、読書の結果、創作を始めた子に出会うことができました。また地域図書館を訪れたときには、地元の若者がボランティアで図書館を維持管理していました。この国では教科書や参考書を買えない家庭が多いなか、ある中学校の校長先生は、生徒の勉強のため、寄付を募って学校図書館を開設しました。

ところでフランス語の本ばかりが流通し、学校で子どもが母語の読み書きを習うことがほとんどない、セネガルを含む西アフリカの旧仏領諸国では、フランス語を習得しなければ読書はできません。セネガルにはウォロフ語やプラール語、セレール語などセネガルとその周辺国のアフリカ諸語で書かれた本を出版し、流通ネットワークを作った出版社があります。本は、農村で母語での識字教育を受けた人々に届けられるのです。出版社の責任者は、アフリカでは多くの人々が自分自身の言語で読み書きできない、それは大きな問題であると言いました。

子どもの本と出版を取り巻く以上のような状況、それに対する出版社や作家、個人の取り組みを、これからも探求していきたいと思っています。

貸本をする書店の貸し出しノート

貸本をする書店の貸し出しノート

地域図書館で読書する子

地域図書館で読書する子

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