[海外出張報告] 大山 修一(開発・生業 班) ニジェール 海外出張期間:2016年9月20日〜10月4日

「サヘル・ニジェールにおける都市衛生の改善と環境修復、紛争予防の試み」
大山 修一

(派遣先国:ニジェール/海外出張期間:2016年9月20日〜10月4日)

西アフリカ、サハラ砂漠の南縁に位置するサヘル地域では現在、テロの頻発と治安情勢の悪化が深刻になっています。その原因として、リビアやアルジェリアにおける政権交代による国内情勢の不安定化、アルカイダをふくむイスラム武装勢力の流入、独立をめざすトゥアレグの反政府勢力の影響を挙げることができます。また、サヘル地域の各地で農耕民と牧畜民の武力衝突が激化しています。経済・平和研究所(Institute for Economics and Peace)が発行する『Global Terrorism Index 2015』によると、2014年の一年間にフルベと農耕民との武力衝突による死者数は1,229人になるという報告があり、その原因として稀少化する土地資源をめぐる競合があるという。また、テロ組織であるボコハラムによる被害者は6,646人にもなります。その背景には、低開発と貧困、飢餓の問題、政府の行政能力の低さがあります。

わたしは2000年からサヘル地域にニジェールで調査を継続していますが、近年、都市の清掃による都市の衛生改善と、荒廃地の緑化、農耕民と牧畜民の紛争予防という試みをつづけています。2015年からは三井物産環境基金の支援を受け、ニジェール環境省、首都ニアメ第4住区、衛生局、ドゴンドッチ市と協定をむすび、都市の内部でのゴミ収集、農村の荒廃地へゴミを運び、緑化をすすめ、共同放牧地をつくるという事業をおこなっています。2012年にゴミを投入した共同放牧地では毎年、家畜の放牧をおこない、落とされる糞が養分になることは分かっていましたが、糞に含まれる種子が発芽し、樹木が大きく生長することが明らかになりました。

雨季には農地が広がるため、牧畜民のフルベは放牧地探しに困窮します。その雨季の終わりに、フルベの牧畜民が毎年、プロジェクト・サイトで家畜の放牧をするために集まって来ます。また、ワサビノキをはじめ有用樹種が多く生育しているため、農耕民の女性たちが食用植物を採集しにやって来ます。プロジェクト・サイトには、おおくの周辺住民―農耕民も、牧畜民も集まってきて、めいめいに利用しています。建設後4年が経過すると、プロジェクト・サイトはコミュニティ・フォーレストのようになってきました。わたしは、毎年、大きくなるバオバブの生長を楽しみにしています。この試みにより、人々の生活が少しでも改善し、人と人とのつながりをつくることを願っています。サヘル地域の現状は非常に厳しいものがありますが、「アフリカ潜在力」とは、こうした小さな試みから生まれてくるものではないかと期待しています。現在、15か所、5.32ヘクタールのプロジェクト・サイトを建設しましたが、今後2年間で計30か所、10ヘクタールのサイト建設を目標にしています。

プロジェクト・サイトにおける牧畜民フルベによる家畜の放牧(2016年9月撮影)

プロジェクト・サイトにおける牧畜民フルベによる家畜の放牧(2016年9月撮影)

プロジェクト・サイトにおける農耕民ハウサの女性による植物の採集(2016年9月撮影)

プロジェクト・サイトにおける農耕民ハウサの女性による植物の採集(2016年9月撮影)

2016年9月に植物が生育するプロジェクト・サイト建設当時の様子(2012年2月撮影)

2016年9月に植物が生育するプロジェクト・サイト建設当時の様子(2012年2月撮影)

プロジェクト・サイトに生育するバオバブの木(2015年11月)

プロジェクト・サイトに生育するバオバブの木(2015年11月)

この出張は、三井物産環境基金(環境活動助成)「西アフリカ・サヘル地域における都市の有機性廃棄物と家畜を利用した緑化活動」により実施いたしました。

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