[第2回全体会議] 「カンパラ・フォーラムにむけて」(2016年11月12日開催)

日時:2016年11月12日(土)13:30~17:00
場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室
(以下敬称略)

はじめに、プロジェクト事務局長の大山修一より、プロジェクト運営に関わる重要事項・注意点、今後の研究会・全体会議の日程・内容などについて、事務連絡があった。

引き続き、12月9日~11日まで、ウガンダ・カンパラで行われる「第6回アフリカフォーラム・カンパラ(通称カンパラフォーラム)」に向けて、松田素二による趣旨説明と、日本人発表者6名による研究発表と質疑応答が行われた。発表者、タイトル、要旨は下記の通りである。

発表者1:高橋基樹(京都大学)
タイトル:African Potential beyond Dichotomy: Local Quest for National Integration?

発表者は、アフリカ潜在力を考察するうえで、人びとがいかに国家や市場経済などのマクロなフレームワークを用いて、平和的な共存を達成しうるのかという、マクロレベルとミクロレベルのインターフェースに迫る必要性を述べた。そして、ケニアのポスト・コンフリクト地域での調査結果から、人びとが、マクロレベルでは民族間の公平な資源分配や他民族との協調を望んでいること、そして実際の日常生活においては、試行錯誤しつつも、マルチエスニックなビジネスを立ち上げ、その一部は成功していることが明らかにされた。

発表者2:杉木明子(神戸学院大学)
タイトル:トランスナショナル化する紛争と紛争解決―北部ウガンダ紛争の事例から

発表者は、「トランスナショナル化」する「国内紛争」の解決は可能かという問いをたて、北部ウガンダ紛争を事例に論じた。この紛争がトランスナショナル化し、長期化した経緯と背景が述べられ、政治的意思の欠如やウガンダ政府・軍に対する不信などにより、平和的解決も軍事的解決も行き詰まっている現状が示された。最後に、紛争解決への地域協力の土壌をつくるために、地域機構が機能を強化させる「機能主義型」アプローチと、関係諸国が対話を積み重ねる「対話・コンセンサス型」アプローチが提示された。

発表者3:山田肖子(名古屋大学)
タイトル:教科書に見る民主主義と多文化共生―エチオピア民主化プロセスにおける市民性教育

発表者は、エチオピアで1993年から発行された中等教育における市民性教科書の変遷を分析し、その民主化プロセスにおいて、政権が学校教育を通じていかなる価値観をもつ国民を養成しようとしたかを明らかにした。政権は教科書において、国家の安定と民主主義の不可欠性、また法の支配や政権の権威の正当性を繰り返し強調していた。また、現在までに対話的手法などを積極的に導入し、初等1年から大学までの必修かつ試験科目にするなど、市民性教育に関して一貫して力を入れてきたことが明らかにされた。

発表者4:波佐間逸博(長崎大学)
タイトル:東アフリカ牧畜社会におけるオルタナティブ・シティズンシップ

東アフリカ牧畜社会は国家から放置されてきた歴史が長く、国家への帰属や権利を模索せず、地縁、血縁、エスニシティを使った「オルタナティブ・シティズンシップ」を発展させてきたと発表者は述べる。現在、ウガンダのカラモジャ地域の牧畜社会は、治安の関係上、軍の基地内に家畜キャンプをおくことを迫られているが、その政策は成功していない。結果、彼らは従来培ったオルタナティブ・シティズンシップにより、価値と経験を共有する共同体をつくり、治安維持、相互扶助を行っていることが明らかにされた。

発表者5:宮地歌織(佐賀大学)
タイトル:ケニア農村部における高齢女性のケアについて

アフリカの高齢化問題は、これまで緊急な課題とはされてこなかったが、今後はより重要になると予想される。発表者はとくに、男性より長生きし、かつ土地への権利が制限される女性に注目し、ケニア農村部に暮らす高齢女性の生活に関する調査を行った。その結果、高齢女性をケアするのは姉妹、娘、孫などの女性であり、高齢女性本人もそれを望んでいることが明らかになった。また、十分な支援を受けている者もいればそうでない人もおり、確実な支援につなげるために、さらなる現地調査が必要であることが指摘された。

発表者6:田原範子(四天王寺大学)
タイトル:モビリティの創造―アルバート湖岸漁村の「生業の風景」より

発表者は、ウガンダ・アルバート湖岸の漁村に暮らす人びとの多様なモビリティについて論じた。ウガンダや周辺の国ぐにから人が集まり、多民族が共存しているこの村は、しばしば大きな危機に直面してきた。しかし人びとは、漁業政策の変更に対しては漁法を変え、生業を漁業から綿花栽培へ(再び漁業へ)と変化させ、選挙に際しては国籍や名前を変更しながら、その危機を生き延びてきた。このような人びとのモビリティこそが、村の社会空間を作り出し、多民族の共在を可能にしてきたと論じられた。

最後に、松田より各発表に対してコメントが述べられ、カンパラフォーラムの方向性と発表者全員への期待が示された。

平野(野元)美佐

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