[第2回班研究会] 環境・生態班第2回研究会(2017年1月28日開催)

日時:2017年1月28日(土)11:00~13:00
場所:京都大学稲森財団記念館3階小会議室1
(以下敬称略)

報告タイトル:ジンバブウェの商業漁業における「現地化」――植民地化の経験とインフォーマルな実践の混淆
氏名:伊藤千尋
所属:広島女学院大学

今回の環境・生態班研究会では班員の伊藤が、ジンバブウェで行なっている調査研究の報告を行なった。伊藤が調査を行なっているのは、ザンベジ川の中流に位置するダム湖でありザンビアとジンバブウェの二か国にまたがるカリバ湖(Lake Kariba)のうち、ジンバブウェ川に位置する地方都市カリバ(Kariba)である。人口2万人ほどのカリバを拠点とする湖での商業漁業が、植民地期から独立前後、そしてハイパー・インフレが発生した近年の政治経済状況の中でどのように変化してきたのかを報告した。

ダム建設によってカリバ湖が形成されたのは1950年代末であり、その後、商業農場労働者向けの食料とするべく、タンガニーカ湖からドジョウ科の小魚(タンザニアではダガー、現地ではカペンタと呼ばれる)が運ばれ、それを対象とする商業漁業が1970年代から行われるようになった。漁をするには政府の許可が必要だが、植民地体制の下では白人にしか許可証は与えられなかった。その後、独立運動が盛り上がる中で1980年代半ばに黒人の参入が認められ、さらに2000年に白人大農場の強制収容が開始されると商業漁業の許可枠の再配分が行われた。この結果さらなる新規参入が可能になっただけでなく、許可証の賃借が行われるようになったことで漁業従事者の流動性が高まった。国の政治経済が混乱する現在では、首都から地方都市のカリバに移動し漁業に参入する者もいれば、他所から移り住んできて一時的に漁を行なうが間もなく去っていく者もいる。そうした中では資源量の減少を危惧する声も聞かれるが、持続的な管理に向けた具体的な取り組みは見られないという。

独立後のジンバブウェにおける土地や資源の「現地化(indigenization)」については先行研究が蓄積されているが、伊藤の研究は水産資源を対象としている点に特徴がある。報告後の質疑・討論の際にはカリバ湖の資源管理制度について、公的な法制度とローカルな社会規範、また国際的な環境運動の影響にかんする質問が多く挙げられた。そしてそれらの質疑を通じて、環境・生態班の議論に欠けていた視点が浮かび上がったように思われる。つまり、これまでの環境・生態班の議論が、農村部の共同体と国家的・国際的な環境運動との間の、世界的にカリスマ的な人気を誇る野生動物(ゾウやライオン、チンパンジーなど)をめぐる折衝に主眼を置いてきたのに対して、伊藤が調査研究を行なっているのは、人の流動性が高い地方都市における、非経済的な価値が乏しい資源をめぐるナショナルというよりもローカルな人々の交渉といえそうである。今回の研究会では事例間の比較までは行なえなかったが、討論の中では、伊藤の事例は班員の目黒の事例と似ている側面があるのではないかという意見も聞かれた。次回以降の研究会において、班員間の(事例や分析の)比較を行いながら、「アフリカ潜在力」の所在と内実についての議論を深めていきたいと思う。

目黒紀夫

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