[合同班研究会]国家・市民班および開発・生業班(2018年6月16日開催)

日時:2018年6月16日(土)12:30-14:30
場所:京都大学稲盛財団記念館3階小会議室2

報告タイトル:ルイボス利用の権利は誰に帰属するか
氏名:阿部利洋
所属:大谷大学社会学部

ルイボスティーは、ワインとともに南アフリカの代表的な農産品のひとつである。輸出品としてのルイボスは、1998年には約1000トンであったのが、2016年には約6000トンに増え、グローバルな健康志向の高まりとともに、欧米のみならずアジアにおいても市場が拡大している。ルイボス(Rooibos: Red Bushのアフリカーンス名。学名はAspalathus linearis)は南部アフリカの先住民が利用していた野生の有用植物のひとつであり、その知識を応用し産業を発展させてきたのがアフリカーナーであった。しかし、2010年に採択された名古屋議定書がひとつのきっかけとなり、そこに記される「遺伝資源に関連する伝統的知識の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を確保するための、相互に合意する条件に関する最低要件」を制度化する動きが南アフリカ国内で生じ(Indigenous Knowledge System Bill, 2014; Indigenous Knowledge Systems Bill, 2016)、アフリカーナー主導の産業構造の中では労働者階層におかれていた先住民コイサンの側から、利益共有・知的所有権をめぐる申し立てが行われている。また、ANC(アフリカ民族会議)政府は、対外的には「先住民族の権益保護を制度化しつつ、南アフリカ固有の産業の振興」を建前に、検討中の法案のなかでは管理・監督の権限を制度化しようと取り組んでいる。

この報告では、グローバルな市場や法制度の動向のなかで、立場を異にする複数のステークホルダーが、南アフリカ固有の資源をどのように位置づけ、対外的に提示していくのか、潜在力という観点から検討を加えた。質疑においては、フーディアやハニーブッシュなど他の南アフリカ固有の有用植物の知的所有権をめぐるこれまでの経緯、担い手の人種・民族的ファクターという点からワインビジネスとの比較、名古屋議定書で提示された「伝統的/土着の知識」という概念の他国における適用例、さらには南アフリカの文学作品のなかでのルイボスの取り上げられ方など、幅広い観点から議論を発展させる余地のあることが指摘された。

文責:阿部利洋

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