[第5回班研究会] 国家・市民班第5回研究会(2018年1月27日開催)

日時:2018年1月27日(土)12:00~14:00
場所:京都大学稲盛財団記念館3階小会議室2

報告タイトル:社会的保護政策の実験場としての南アフリカ――現金給付の技術と思想をめぐって――
氏名:牧野久美子
所属:日本貿易振興機構アジア経済研究所

慢性的な貧困や脆弱性に対処するための社会的保護政策の内容は多岐にわたるが、そのなかでも近年、各種の現金給付プログラムが注目を集めており、アフリカ、ラテンアメリカ、アジア等の新興国・貧困国で導入の動きが広がっている。南アフリカでは、こうした最近の現金給付ブームよりも何十年も前から大規模な現金給付(「社会手当」)政策が実施されてきた。読み書きができず、それまで金融サービスと縁遠かった人々に現金を届けるために、生体認証を用いた現金給付システムが最初に構築されたのも南アフリカであった。また、南アフリカでは、1990年代末から2000年代はじめにかけて、ベーシックインカム(BI)が政策オプションとして真剣に検討された。結局、南アフリカでBIが実現するには至らなかったが、南アフリカの動きはその後の世界的なBIや現金給付の議論や動向に影響を与えた。

このように南アフリカが、現金給付に関して、思想的・技術的ないくつかの面で先駆的な動きを経験してきたことを踏まえ、本報告では、現在の形の南アフリカの社会手当制度が、どのような歴史的経緯とアパルトヘイト後の制度改革論議を経て成立したのかを振り返った。そのうえで、南アフリカにおける社会的保護政策に関する議論と実践が「潜在力」を持つとしたらどのような意味においてなのか、また解決すべきどのような課題があるのかを検討した。質疑応答においては、フィールド・ワークで遭遇した、現金給付プログラムのデザインの意図とは異なる創造的な現金の使われ方が紹介されたほか、ネオリベラリズムとの関係を意識しながら社会的保護政策について検討することの重要性が確認された。

文責:牧野久美子

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