[北東アフリカ・クラスター第3回研究会]橋本栄莉「『紛争』と『解決』の文化装置再考―南スーダン、ヌエルの予言者の歴史的生成過程と現代の牧畜民紛争」(2012年11月16日開催)

日 時:2012年11月16日 16:30~18:30
場 所:京都大学稲盛財団記念館3階301号室

プログラム

「紛争」と「解決」の文化装置再考―南スーダン、ヌエルの予言者の歴史的生成過程と現代の牧畜民紛争
橋本栄莉(一橋大学)

報告

南スーダンにくらすヌエルの予言者が、歴史的にいかなるまなざしによって成立し、規定されてきたのか、そして現代の紛争時に予言者がいかなる役割を果たしているのかを分析した。発表ではまず、「紛争の仕掛け人としての予言者」という認識がいかに創出されたのかを、植民地行政官らによる予言者をめぐる記述から分析するとともに、その同じ予言者がヌエルの人びとからは「平和構築者」として想起されてきたことを示した。つぎに、2011~2012年に発生したロウ・ヌエル―ムルレ間の武力衝突の際に登場した自称予言者を、異なる立場にあるアクターがそれぞれいかなる存在として位置付けているのかを明らかにした。最後に、ヌエルにおける予言者は、多様なアクターが紛争を事後的に理解するための文化装置として、また紛争の「解決」方法を考えるための物語を編成する文化装置として作用していることを論じた。
議論では、予言者のヌエル社会における社会的地位はいかなるものであるのか、予言者は実際の紛争の動員過程でいかなる役割を果たし(たとえば分節出自を越えた動員をおこなっているのか)、また平和構築の現場にどのように巻き込まれているのか、過去の予言者のことばがいかにテキスト化され利用されているのか、予言者とキリスト教はどのような関係にあるのか、文化装置やまなざしという語を用いることがこの研究対象を分析するにあたって有益なのか、といった質問がなされた。(佐川徹)

カテゴリー: 北東アフリカ(地域別研究クラスター), 研究活動 パーマリンク