[経済・開発ユニット第6回研究会]Othieno Nyanjom「ケニアにおける民族対立と国政選挙」(2013年10月08日開催)

日 時:2013年10月8日(火)15:00~18:00
場 所:神戸大学大学院国際協力研究科6階シミュレーションルーム

プログラム

「ケニアにおける民族対立と国政選挙」
Othieno Nyanjom(Kenya Institute of Public Policy Research and Analysis)

報告

Nyanjom 講師は、科研Sの下での高橋基樹との共同研究に基づきケニアの国政選挙と民族対立との関係について報告を行った。1992年の複数政党制復帰以降ケニアでは政治的な暴力が民族の境界に沿って展開したが、報告ではその原因と構造を、ケニアの植民地時代以来の政治経済体制の生成変化と独立以来の競争的選挙を軸とした政治的闘争に求め、詳細な実証的考察を参加者と共有した。議論の骨子は以下のとおり。
植民地時代に行われた民族の境界による地域・集団の画定およびそれに続く選挙の導入は民族ごとの政治的単位の形成を促し、その中での政治家と大衆の間の土地等の資源の配分をめぐる経済的正義の共有と矛盾、民族間における経済的正義の衝突を生み出した。独立以来ほぼ一貫して競争的選挙が実施されてきたが、選挙を通じた政権の獲得はある経済的正義が他方に勝ち、勝者の側に有利な資源配分をもたらした。そのことは、敗者の側の大衆の憤懣と恐怖を生み、民族間の対立を大衆レベルに根付かせるとともに、政権(へのアクセス)の獲得と保持を民族の政治的リーダーにとっての至上命題とした。そして、暴力の行使や経済的正義についての考え方の操作を辞さない政治文化を醸成した。そうした政治経済のあり方が継続したたまま複数政党制選挙が再導入されたことが、選挙後暴力に至るケニアでの民族対立と暴力の頻発につながった。こうした問題を根本的に乗り越えるためには、経済的正義についての観念の対立に関する、民族の境界や階層の違いを超えた平和的な熟議を積み重ねることが必要である。(高橋基樹)

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