[西アフリカ・クラスター第3回研究会]大山修一「ニジェールの人口増加問題と『現金獲得の糸口』―農耕民社会からみた牧畜民とのコンフリクトの背景―」(2012年07月14日開催)

日 時:2012年7月14日(土)15:00~17:00
場 所:京都大学稲盛財団記念館3階 301室

プログラム

「ニジェールの人口増加問題と『現金獲得の糸口』―農耕民社会からみた牧畜民とのコンフリクトの背景―」
大山修一(京都大学)

報告

ニジェールの人口増加率は3.5%と非常に高く、合計特殊出生数は7.1、20年で人口が2倍になる驚異的なペースである。どうして人口が急増するのか、ハウサの農村社会の論理を”harkuki(動き)”という概念で説明したうえで、農耕、牧畜、副職業、出稼ぎといった積多角的な経済活動に積極的に従事する人々の姿を示した。農村では、外部社会からの現金収入の多寡に応じて経済格差が大きく、所有する畑の面積、収穫量、家畜飼養のサイズに大きな差異が存在する。急増する人口によって、相続で受け取る畑の面積も縮小する傾向が強い。農耕や牧畜といった村内活動では自給ができない世帯も増加している。そうした世帯では、食料不足が慢性化しており、雨季における牧畜民による作物の食害で賠償金を得ようする人々も出現している。農耕民は、収穫したトウジンビエを故意に畑のなかに放置しておき、家畜がトウジンビエを食べたことをもって、牧畜民から賠償金を得ようとするのである。ハウサ社会では、このようなことを、「現金獲得の糸口(Bidan kudi)」と呼ぶこともある。サヘル地域では、雨季における農耕民と牧畜民の衝突が頻発し、その理由として稀少な土地資源をめぐってコンフリクトが起きると説明される。しかし、実際には、土地をめぐって争うのではなく、作物の食害をめぐる事実の認定をめぐって、意見が衝突し、その交渉がまとまらないときに、武力衝突に発展することが多い。食害認定の交渉では、当事者だけではなく、農耕民、牧畜民ともに代理人をたて、その代理人どうしは顔見知りであることが重要である。サヘル社会における、農耕民と牧畜社会のあいだで起きるコンフリクト、および、その修復に対する人々の取り組みを議論した。(大山修一)

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