[西アフリカ・クラスター第5回研究会]「誰が道路を止めたのか:カメルーン東南部、バクエレの妖術と開発」(2013年10月26日開催)

日時:2013年10月26日(土)
場所:東京外国語大学本郷サテライト3階セミナー室

プログラム

山口亮太(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
「誰が道路を止めたのか:カメルーン東南部、バクエレの妖術と開発」

報告

山口氏は、カメルーン東南部の民族バクエレが暮らすある村で起こった道路建設をめぐる「紛争」について論じた。この村周辺の人々は、19世紀末以降、ドイツ人の進出やフランスによる強制労働、他民族の移動などに翻弄されながら、現地域に定着した。この地域には1970年代から伐採会社が進出し、道路が建設され、村々は川沿いから道路沿いに移動した。同時に、異邦人や現金が流入するなど社会変動にも見舞われた。

この地域の村々を通っていた道路は、1980年代に伐採会社が撤退すると荒廃し、通行が困難な状況が続いていた。2010年には、村々にとって念願であった道路改修工事が開始されたが、ある村で重機の故障により改修が止まり、奥の村まで道路が届かなくなった。その後、道路が届かなかった村々で、工事停止の原因がある人物のエリエーブ(妖術)によるものだという噂が広まった。それを解決するため、村の代表があつまって会議が行われたが、解決には至らなかった。

山口氏は、この「紛争」で焦点となったエリエーブについて分析し、エリエーブは肯定的にも否定的にも作用する両義性をもつこと、持ち主に働きかける内なる強制力、あるいは逆に持ち主がコントロールできる道具性という両面で語られていることを論じ、モダニティとローカルな出来事の接続による新しいエリエーブの可能性を示唆した。

発表の後の質疑では、エリエーブの性質についてや、他地域の妖術との比較などが議論された(平野美佐)。

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