[全体会議] 第17回全体会議「環境・生態班からの報告」(2020年10月17日)

日時:2020年10月17日(土)15:00~17:00
場所:オンライン開催

はじめに、プロジェクト成果出版の進捗状況や今後の予定などについて、事務局から連絡があった。
引き続き、環境・生態班の研究発表がおこなわれた。司会を務める環境・生態班の班長目黒紀夫氏(広島市立大学)が趣旨説明をおこない、下記2名の発表者が研究発表をし、阿部利洋氏(大谷大学)と山越言氏(京都大学)がそれぞれコメントした。その後、総合討論があった。発表者、タイトル、発表内容は下記の通りである。

発表者1:市野進一郎(京都大学)
タイトル: 生物多様性保全のためのアフリカ潜在力:マダガスカル南部、川辺林におけるタマリンド、ヒト、キツネザルの関係

発表者は、マダガスカル南部の川辺林におけるタマリンド、地域住民、キツネザルの関係を事例に、生物多様性保全のためのアフリカ潜在力について考察した。マダガスカル南部の河川流域にはタマリンドが優占する川辺林が発達しているが、断片化が著しい。残された少数の森林は、地域住民(タンルイの人々)によって保護されてきた。タマリンドは、地域住民にとって経済的・文化的に重要な樹種で、特に救荒食物として重要視されている。また、タマリンドはワオキツネザルにとっても食物や休息場所として重要である。ワオキツネザルは、地域住民によって保護されてきたが、タマリンドの種子散布者として森林更新に貢献している。以上のように、3者の関係は相互に利益のある生態学的相互作用と地域住民にとっての文化的価値を含んだ関係である。そうした関係を包括的に理解することが重要であると論じた。

発表者2:藤岡悠一郎(九州大学)
タイトル:人為自然環境の潜在力:南アフリカ、ファラボルワ地域におけるマルーラの商品化の事例から

発表者は、南アフリカの非木材林産物の商品化を事例に、非木材林産物の活用と人為自然環境の機能をアフリカ潜在力の観点から考察した。ファラボルワ地域では、ウルシ科の落葉高木マルーラの木が地域全域に自然増加しており、伝統的に、その果実で醸造酒が作られてきた。1980年代以降、ある企業がマルーラの果実から蒸留酒を作ることに成功し、商品化をおこなってきた。企業は、その原料となるマルーラの果実を地域住民から買い取っているが、それが低所得者のエンパワーメントになっているという見方と、構造的な搾取という見方がある。またマルーラは薪炭材には適さないため、結果保護されており、サステイナブルな地域資源となっていることが論じられた。

平野(野元)美佐/市野進一郎

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