[全体会議] 第10回全体会議「ガーナ・アクラフォーラムにむけて」(2018年11月3日開催)

日時:2018年11月3日(土)14:00~17:00
場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室

はじめに、事務局から以下5点に関する連絡がおこなわれた。
1)アフリカフォーラムの概要
2)次世代調査支援の詳細
3)京都シンポジウムの外国人招待者の決定
4)活動報告(ASM特集号、世界社会科学フォーラム、京大アカデミックデイなど)
5)今後の予定

引き続き、12月7日~9日まで、ガーナのアクラで行われる「第8回アフリカフォーラム(通称アクラ・フォーラム)」に向けて、松田素二による趣旨説明、そして日本人発表者4名による研究発表と質疑応答が行われた。発表者、タイトル、発表内容は下記の通りである。

司会:太田至(京都大学)

発表者1:岩田拓夫(立命館大学)
タイトル:Political Satire and Comedy in Africa

発表者は、アフリカの風刺と笑いがどのように現実の政治を反映し、また政治に影響を与えるかについて報告を行った。風刺や笑いは、厳しい政治状況下でも行われる「下からの政治」であり、それにより、立場の弱い人たちがつかの間でも、政治的優越感を持つことができる。ベナン、トーゴ、ブルキナファソの政治状況の違いは、風刺や笑いに反映されている。「ゴンドワナ共和国」という風刺と笑いのプラットフォームは、メディアやインターネットなどを通じて、とくにフランス語圏アフリカで共有されている。最後に、笑いがどのような政治変化をもたらしたかの因果関係を証明することは困難だが、権力者への畏怖の低減など、なんらかの効果があると論じられた。

発表者2:佐久間寛(東京外国語大学)
タイトル:払えぬ負債の潜在力

負債については経済的な負債だけではなく、社会的な負債があることを指摘したうえで、発表者がニジェールの首都ニアメに元助手4人を呼び寄せた体験をもとに、利益の最大化という経済的動機からは説明できない社会的負債をめぐる力学を示した。元助手が発表者と分かれたのち、第三者を通じて強い不満を伝え、そこで志向されていたのは、利益の最大化ではなく、自らが相手に負う負債を最小限にしながら、相手がみずからに負う負債を最大限にする情況であった。厳密に計量化できるはずの借金でさえ、計量化や支払いが不可能な社会的負債に変質させることができ、関係の継続のために負債は完済してはならないと結論づけた。

発表者3:山越言(京都大学)
タイトル:幽鬼の森の保全―ギニアの人為的景観に見るコンヴィヴィアリティ

フランシス・ニャムンジョが異種混交的なアフリカ潜在力のメタファーとして用いた、ナイジェリアの作家A. チュツオーラの『やし酒飲み』を、生態学的な景観描写に注目して概観した。その上で、発表者が行ってきたギニア森林地域の野生チンパンジー研究の事例から、人の暮らしと野生動物が混交する人為的生態系が持つ豊かな可能性について詳説し、生態学的視点からコンヴィヴィアルなアフリカ潜在力を論じる方向性について提案した。

発表者4:山田肖子(名古屋大学)
タイトル:”Dignity of Labour” for African Leaders: The colonial roots of education and the pendulum between liberal and vocational education in post-independence Ghana

発表者は、アフリカの教育政策がどのように形成されてきたか、戦間期の英領ゴールド・コーストにおける教育に関する言説の分析を通じて議論した。戦間期は公共投資の増加にともない植民地における教育の需要が高まった時期だった。そのような時期に、植民地行政官はミッショナリー、アメリカの慈善団体、学者などとの議論を通じ、当時の様々な思想・用語を部分的に取り込み、教育政策に反映させた。その中には、体験を重んじる進歩主義教育モデル、アメリカの黒人解放奴隷に対する教育モデル、モラリティや教育環境を重視するパブリックスクールモデルなどが含まれていた。こうした教育政策の成り立ちがあるため、開発のための教育が一般教育と職業教育の間で揺れ動いたものになっていると論じた。

山越言/大山修一/平野(野元)美佐/市野進一郎

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