[社会・文化ユニット第2回研究会](2011年09月23日開催)

日 時:2011年9月23日 (金)
場 所:京都大学稲盛記財団記念館3階小会議室1

プログラム

15:00~18:00:構成メンバーの研究紹介
松田素二 ケニアPEVに対するローカルイニシャティブの可能性
太田至 トゥルカナの人々の対面的交渉力と秩序形成:難民キャンプとのつきあいのなかで
平野美佐 家族の「紛争」とその解決:カメルーンのやもめ儀礼
近藤英俊 ナイジェリア北部の慢性化する紛争
内藤直樹 社会の「外部」に生きる:ケニア・ダダーブ難民キャンプ複合体における長期化難民の生活実践
佐川徹 大規模土地取引がエチオピアの地域社会に与える影響
梶茂樹 紛争予防機能としてのマルチリンガリズムの可能性

報告

今回は、各構成メンバーが本科研において焦点を当てようとしている研究課題の概要について発表をおこなった。松田氏は、ケニアでの2007年~2008年の選挙後暴力(PEV)時に、ナイロビのスラムに暮らす人びとが地域の治安を確保するために、自発的にコミュニティーポリシング活動を開始した経緯を紹介した。太田氏は、ケニア北部のトゥルカナの人びとが、彼らの居住地域につくられた難民キャンプに暮らす難民とのあいだに個人的な友好関係を形成したり、家畜商人集団を組織して家畜泥棒に備えている事例を示した。平野氏は、カメルーンのバミレケ社会では、夫が死亡した際に「夫を殺したという疑い」を晴らすためにおこなうやもめ儀礼を取り上げ、儀礼ではほとんどの場合妻は「無実」になることを論じ、この儀礼が寡婦となった女性を社会に再統合させる役割を担っていることを論じた。近藤氏は紛争多発地域であるナイジェリア北部で1960年代以降発生してきた大規模な紛争についてまとめ、今後どのような形で地域の対立構造が緩和しうるのかを考察していくことを述べた。内藤氏は、ケニアのダダーブ難民キャンプにおいて、長期化する難民状態はホスト国や難民キャンプ周辺に住む人々にとっても日常化しつつあり、難民と地域住民との長期にわたる相互交渉の結果、地域に新しい「日常生活」が作り上げられつつある点を指摘した。佐川氏は、エチオピアでは政府が海外直接投資を積極的に受け入れ、大規模な土地をリースで外部資本に貸し出していることを指摘し、今後、地域住民とそれらの外部勢力との間に紛争が生じる可能性について触れた。梶氏は、ウガンダの地方都市での社会言語学的調査の結果から、多くの人びとがマルチリンガルであることが紛争の予防といかなる関係を有しているのかを検討していきたいと述べた。

最後に松田氏が、過去に各地域社会で機能していた紛争解決方法はどのようなものであったのか、それらがどのように歴史的に変化してきたのか、それらは現在いかなる紛争解決機能を担っているのか、あるいはいないのか、を検討することが、「社会・文化ユニット」で今後検討されるべき基本的な課題であると述べた。(伊藤義将、佐川徹)

カテゴリー: 研究活動, 社会・文化(テーマ別研究ユニット) パーマリンク