[全体会議] 第18回全体会議「アフリカ潜在力プロジェクトの総括と今後の展望」(2021年1月30日)

Wrap-up Meeting: A Ten-Year Challenge of African Potentials Project(会議言語:英語)

日時:2021年1月30日(土)15:00~17:00
場所:オンライン開催

会議に先立ち、2020年12月29日にハルツームで急逝されたサムソン・ワサラ教授(ジュバ大学)のご冥福を祈り、全員で黙祷を捧げたあと、栗本英世(大阪大学)が弔辞を述べた。ワサラ教授は、2011年12月にナイロビで開催した第一回アフリカ・フォーラム以来、本プロジェクトの主要なメンバーとして多大な貢献をされた。

本会議は、以下のプログラムでおこなわれた。

Opening Remarks: Motoji Matsuda (Kyoto University, Japan)
Comments
1.Kennedy Mkutu (United States International University, Kenya)
2.Francis B. Nyamnjoh (University of Cape Town, South Africa)
3.Itaru Ohta (Kyoto University, Japan)
4.Edward Kirumira (Stellenbosch Institute for Advanced Study, South Africa)
5.Yaw Ofosu-Kusi (University of Energy and Natural Resources, Sunyani, Ghana)
6.Eisei Kurimoto (Osaka University, Japan)
7.Michael Neocosmos (Rhodes University, South Africa)
8.Motoji Matsuda (Kyoto University, Japan)
General Discussion (Chair: Itaru Ohta)
Closing Remarks (Misa Hirano-Nomoto)

最初にプロジェクト代表者の松田素二(京都大学)が、第1期(2011~2015年度)と第2期(2016~2020年度)の10年間にわたって、このプロジェクトがなにを目的としてどのような活動をおこなってきたのかをまとめた。本プロジェクトは、さまざまな困難を解決するためにアフリカの人々が活用する在来の考え方や技法に焦点をあてて、それらがポスト・コロニアルな状況とグローバル化の波のなかでどのように変容しているのか、また、わたしたちは人文社会科学を刷新するためにそこからなにを学び、どのような知の生産をおこなえるのかを検討してきた。

そのプロセスでわたしたちは、さまざまな取り組みをおこなってきたが、なかでも、毎年、アフリカの諸都市で開催してきた合計9回のアフリカ・フォーラムは、「アフリカ潜在力」という考え方を彫琢しつつ、アフリカと日本の研究者のあいだのネットワークを構築するために特に有効であった。また、松田は、アフリカ潜在力という考え方の特徴を、「Fluidity and Flexibility」「Incompleteness and Multiplicity」「Bricolage (Coviviality)」の三点にまとめて論じた。

本プロジェクトの成果の一部は、以下の7冊の英文論文集として出版する。そのうち、Vol. 1~5は2021年3月、Vol. 6~7は、2021年7月に出版予定である。

Volume 1
Title: African Politics of Survival: Extraversion and Informality in the Contemporary World
Editors: Mitsugi Endo (The University of Tokyo), Ato Kwamena Onoma (CODESRIA) and Michael Neocosmos (Rhodes University)

Volume 2
Title: Knowledge, Education and Social Structure in Africa
Editors: Shoko Yamada (Nagoya University), Akira Takada (Kyoto University) and Shose Kessi (University of Cape Town)

Volume 3
Title: People, Predicaments and Potentials in Africa
Editors: Takehiko Ochiai (Ryukoku University), Misa Hirano-Nomoto (Kyoto University) and Daniel E. Agbiboa (Harvard University)

Volume 4
Title: Development and Subsistence in Globalising Africa: Beyond the Dichotomy
Editors: Motoki Takahashi (Kyoto University), Shuichi Oyama (Kyoto University) and Herinjatovo Aimé Ramiarison (University of Antananarivo)

Volume 5
Title: Dynamism in African Languages and Literature: Towards Conceptualisation of African Potentials
Editors: Keiko Takemura (Osaka University) and Francis B. Nyamnjoh (University of Cape Town)

Volume 6
Title: ‘African Potentials’ for Wildlife Conservation and Natural Resource Management: Against the Images of ‘Deficiency’ and Tyranny of ‘Fortress’
Editors: Toshio Meguro (Hiroshima City University), Chihiro Ito (Fukuoka University) and Kariuki Kirigia (McGill University)

Volume 7
Title: Contemporary Gender and Sexuality in Africa: African-Japanese Anthropological Approach
Editors: Wakana Shiino (Tokyo University of Foreign Studies) and Christine Mbabazi Mpyangu (Makerere University)

松田の講演のあと、本プロジェクトの主要メンバー8人が、それぞれにこのプロジェクトの成果と残された問題点について論じた。そこで提出された今後の検討課題は、以下のとおりである。
(1)「アフリカ潜在力」をどのように定義し、また、どのように概念化するのかに関しては、まだ、誰もが同意する地点に到達していない。今後、実証的・経験的な研究と同時に、理論的・哲学的な研究をさらに進める必要がある。
(2)「アフリカ潜在力」は、アフリカで実際に生起しているさまざまな困難の克服のために、いったいどれだけ有効であるのかについて、マクロ、ミクロの両レベルから、もっと研究を深める必要がある。また、アフリカ潜在力を実現するためには、国家やアフリカ連合、地域共同体などの組織は、どのように動員できるのかも検討しなくてはならない。
(3)アフリカの政治、経済、社会や文化が現在、大きく急速に変容する状況のもとで、アフリカ潜在力は、どのように評価され、どう変化するのかに関して、さらなる研究が必要である。
(4)アフリカ潜在力という考え方は、アフリカ以外の地域ではどのように有効であるのかを、他地域の研究者との共同研究によって検討する必要がある。

太田 至

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