[班研究会] 教育・社会班第5回研究会(2017年10月14日開催)

日時:2017年10月14日(土)12:00-14:00
場所:京都大学稲盛財団記念館3階小会議室1
(以下、敬称略)

教育・社会班では、これまで教育学、人類学、政治学の視点での研究分野の紹介や構成メンバーの現地調査報告などを行ってきた。また、前回、6月の全体会で、教育・社会班から中和渚氏が発表し、高田明氏、網中昭世氏、大塲麻代氏を中心としてパネル討論を行った結果、フロアから様々な意見を受け、その後、班内のメーリングリストで、関連する既存研究や学説等について活発な議論が起きた。その議論を受け、2017年10月14日の班会議では、Jane Lave and Etienne WengerによるSituated Learning: Legitimate Peripheral Participationという本を読み合わせ、意見交換を行った。読み合わせ会のリーダー・要旨発表者は、辻本温史氏、中和渚氏であった。

本書は、「学習」を実践共同体に参加し、そこでの知識や考え方を内部化し、メンバーとしてのアイデンティティを形成する中でおきる社会化の過程として捉えている。そのため、知識は文脈に根付いて共同体に内在しているものとみなされる。これは、知識を文脈から切り離してユニバーサルなものとして教える学校教育に対置される考え方のように見えるが、実際には、学校の中にも「実践共同体」は存在し、学校研究にも当てはめることができるという意見があった。

他方、Lave and Wengerは、学校教育が学習を商品化し、学習結果の使用価値と交換価値の分離が起きる可能性を指摘している。この点につき、学校には、共同体としての側面もあると同時に、制度としての形と資格認定が伴うことによる影響もあり、両者を混同せず、かつそれらの関係をつぶさに分析することの意義も指摘された。
また、Lave and Wengerの研究は、「学習」を主に社会化のプロセスとしてとらえているが、その場合、学習は一定の枠組みの中での熟達と適応を意味し、その枠組みを超えた主体性は排除される。その共同体の価値観や知識枠組みを変えるような学習もあり得るという意味で、個人の認知や発達に対する検討も必要ではないかという意見もあった。

活発な議論となり、各メンバーの研究にも示唆が多いとの共通認識から、今後も関連する古典的研究の読み合わせを続けることで合意した。

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