[班研究会] 言語・文学班第9回研究会(アフリカ文学研究会との共催)(2019年5月17日開催)

日時:2019年5月17日(金)13:00~17:00
場所:大阪大学中之島センター 多目的室607

発表者1:村田はるせ
タイトル:「ベルナール・ダディエと伝承」

要旨:コートジヴォワールの作家ベルナール・B・ダディエ(Bernard B. Dadié :1916-2019)は、1954年に発表した伝承集『アフリカの伝説(Légends africaines)』に「バウレの伝説」という物語を収めた。彼はこれを、多様な解釈を呼び覚ます物語として書いた。しかし独立後のコートジヴォワールではこの物語は、子どもを犠牲にした高潔な母・女王の像とともに広く流布した。この発表では、この物語を読み直し、現代作家ヴェロニク・タジョ(Véronique Tadjo :1955-)がこれを『女王ポクー(Reine Pokou)』として2004年に発表したことの意味を考えた。コートジヴォワールが内戦状態にある時期に書かれたこの作品でタジョは、伝承がもともともっていたはずの解釈の可能性の幅の広さを蘇らせた。彼女は、直接的で解釈の余地のない言葉やイメージによって紛争に動員されてしまう若者たちの想像力に語りかける文学のありかたを、この作品で問いかけたのだと考えられる。

発表者2:小野田風子(京都大学)
タイトル:「政治的なスワヒリ語詩にみる芸術の社会志向性:ムヤカ・ビン・ハジに着目して」

要旨:アチェベやサンゴールがアフリカにおける「芸術のための芸術」の存在を否定し、最近でもニャムンジョが、アフリカでは個人的活動ではなく共生的実践(コンヴィヴィアリティ)に価値が置かれると述べていることからも、アフリカにおいては芸術はそれ自身に価値があるというよりは、社会に具体的な影響を与えて初めて価値が認められるように思われる。スワヒリ語詩の成立史を概観すると、社会の変化に伴い詩の形態もより多くの集団に伝わるための変化を繰り返していることが見受けられ、社会と詩の密接な関係性がうかがえる。本発表では、19世紀初頭の詩人ムヤカ・ビン・ハジ(Muyaka bin Haji, 1776-1837?)の詩を、当時の政治的背景と照らし合わせて分析することで、スワヒリ語詩のもつ社会志向性を浮かび上がらせようと試みた。

発表者3:林愛美(大阪府立大学)
タイトル:「FGMの代替儀礼におけるマサイの「新しい」女性像:ローカルNGOによる女性のエンパワーメントについての考察」

要旨:ケニアの牧畜民マサイの社会では、通過儀礼として女性の性器切除(Female Genital Mutilation、以下FGM)が行われてきた。しかし、FGMは心身に深刻な弊害を与えることから、2001年より法律で禁止された。本発表では、マサイの女性が主導するフェミニストNGOが行ったFGMの代替儀礼に着目し、地元NGOによる女性のエンパワーメントの理念を読み取るとともに、NGOが少女たちに歌わせたエンパワーメント・ソングに見られる「新しい」女性像について分析した。

This entry was posted in summary. Bookmark the permalink.