【2015年度派遣報告】浅田静香「ブリケット生産による資源循環と調理用燃料をめぐるウガンダ住民の実践」

(派遣先国:ウガンダ/派遣期間:2016年1月~2月)
「ブリケット生産による資源循環と調理用燃料をめぐるウガンダ住民の実践」
浅田静香(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
キーワード:調理用燃料, 森林保護, 資源の循環, 都市, 難民

研究の背景と目的

ブリケットとは、農業残渣、林業廃棄物、家庭の調理ごみから作られた調理用燃料である。ウガンダでは2000年代より、おもに都市周辺において生産されるようになった。ブリケットには生産時に炭化される炭化ブリケットと、炭化する手順をともなわない未炭化ブリケットがあるが、ウガンダで生産されるブリケットは炭化ブリケットが多い。生産地で多く排出される植物残渣が材料となり、都市部では調理ごみ(主食作物の皮など)、地方では農業残渣や林業廃棄物(おがくず、トウモロコシの芯、もみ殻、バガスなど)が使用される。ブリケット生産により森林資源を保全する効果が期待されており、国際機関やNGO、カンパラ市によるプロジェクト支援が実施されている。

本研究の調査地であるウガンダの首都カンパラでは、2001年以降にブリケットの生産がいたるところで見受けられるようになった。家庭でブリケットを手作りして小規模に販売する人もいれば、NGOや企業レベルでブリケットを生産し、ビジネスを展開する人もいる。最近では、カンパラに拠点を置く企業が地方へ出向いてブリケットの生産を普及させたり、生産拠点を地方へ移動させる事例も出てきている。

本調査では、(1)ブリケット生産による資源循環の可能性を検討すること、および(2)ブリケットの普及活動と新しい燃料に対する住民の反応を明らかにすることを目的とする。(1)はカンパラにおいて、(2)はチャカⅡ難民居住地において調査を実施した。カンパラは、最近5年ほどでブリケットの生産が増加した地域であり、家庭から排出される調理ごみと木炭くずを用いてブリケットを生産させることが最大の特徴である。チャカⅡ難民居住地では、2015年よりカンパラに拠点を置く企業が本格的にブリケットの生産に着手し、UNHCRやウガンダ政府の支援のもと、ブリケットの普及を進めるプロジェクトが進行している。

得られた知見


写真1 コミュニティの住民たちとブリケットを成型する

(1)カンパラにおけるブリケット生産
コミュニティの住民とともに自宅でブリケットを生産するPcさん、Ssさん夫婦とともに、材料となる植物残渣の入荷、乾燥、炭化、つなぎとの調合、成型、乾燥のすべての過程において、重量を計測しながら穀物袋1袋分のブリケットを生産した(写真1)。PcさんとSsさんは、カンパラの郊外でブリケットを生産している。かれらは材料や成型したブリケットを天日で乾燥させる。炭化は炭化ドラムなどの機材を用いずに燃やし、成型は手で団子状に丸める。普段いちどにブリケットを作る量である穀物袋2袋分の調理ごみから、穀物袋1袋分、33キログラムのブリケットが生産できた。1キログラムあたりのブリケットを生産するのに約4.3キログラムの植物残渣と木炭くずを費やしていることがわかった。過去の調理観察時の記録と照合すると、この量の植物残渣は、1世帯が1食分のマトケ(プランテンバナナ)を調理するときに排出される植物残渣とほぼ同等の量であった。

カンパラの人びとにとって文化的、社会的価値の高いマトケは、現在ではコメやトウモロコシの練り粥のように安価で、誰しも毎日食べられる主食ではない。しかし、飲食店ではどこでも必ずマトケを出しているように、現在でも日常的に食べられ、日常的に多くの植物残渣を出している主食である。マトケの皮など、カンパラで排出される多量の植物残渣は、ブリケット生産者にとって材料の入手をより簡単にしていると考えられる。

今後は、カンパラの住民にブリケットがどのように受け入れられていくのか、または別の選択肢を選ぶのか、社会的、文化的背景を考慮しつつ現地調査を実施したい。


写真2 ブリケット販売店の看板と販売員

(2)チャカⅡ難民居住地における住民のブリケットの受け入れ
首都カンパラから200キロメートルほど西方面にあるチャカⅡ難民居住地では、AP社という企業がUNHCRとのパートナーシップのもと、2015年からブリケットを生産している。ここでは薪の採集による森林不足が深刻であり、居住地外へ薪を採集に行く難民と周辺住民との間の衝突が問題視されている。2015年11月より、本格的に住民への普及を目指したブリケットの販売が開始し、2016年2月末までに16ヶ所の販売店を設置した(写真2)。報告者はこのチャカⅡ難民居住地において、住民のブリケットに対する反応と、実際に生活に取り入れていく過程を調査した。

難民居住地内のA地区とB地区において世帯に聞き取り調査を実施したところ、中心部に近いA地区では44パーセントの世帯が、キャンプの周縁部に位置するB地区では34パーセントの世帯がブリケットを調理に使用する燃料のひとつとして購入していた。ブリケットはとくに雨の日に多く使用されていた。ブリケットのほかには、薪、木炭、トウモロコシの芯が燃料として調理時に使用されていた。薪はもっとも多くの世帯によって使用されており、居住地区内に植林されたユーカリの枝や、収穫後のキャッサバの枝を折って使用している人もいれば、周辺住民と個人間で許可を得て薪を切らせてもらう人もいた。難民が自分の農作物と薪を交換してもらう事例も見られた。木炭は周辺住民が居住地に持ち込んで販売しているものである。トウモロコシの芯は収穫後である乾季(6~7月、12月~3月)に多く使用され、滞在中もトウモロコシの芯をかまどにくべる女性の姿をよく見かけた。多くの世帯において、複数の種類の調理用燃料を使用していた。


写真3 世帯の軒下で調理をする女性

ブリケットをもっとも主要な燃料として使用する世帯によると、白煙が出ない点と長時間燃える点がブリケットの長所である。しかし、経済的な理由や他の種類の燃料の入手可能性の高さから、ブリケット以外の燃料を選択している人も多い(写真3)。

チャカⅡ難民居住地では、ブリケットの生産はAP社、販売はSACCO(Saving and Credit Cooperative Organization:貯蓄信用組合)が管轄している。また、NZという政府機関がAP社とSACCOを監視する役目を果たしている。プロジェクト全体の管轄はUNHCRおよびウガンダ政府執り行う。NZやAP社、UNHCRが目指すのは難民居住地におけるブリケットの100パーセントの普及率である。そのいっぽうで、難民、とりわけ女性のビジネスを促進させたいSACCOは、ブリケットと木炭を並べて販売したりなどNZの意図に反することをして、NZとのミーティングで指摘を受けることもあった。あるブリケット販売員によれば、ブリケットの販売開始以来、周辺住民はより多くの木炭を持ち込むようになったと言う。トウモロコシの芯はAP社にとって主要なブリケットの材料であるが、AP社に持ち込めば現金となるトウモロコシの芯を、売らずにそのまま燃料として使用する人も依然として多い。

カンパラの事例とは異色の「上から」ブリケットが入ってきたチャカⅡ難民居住地において今後、トウモロコシの芯から作られたブリケットは薪や木炭の代替となるのか、それとも難民たちにとって新しい選択肢のひとつとしての地位を確立するのか、引きつづき調査を進めていきたい。

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