[第1回アフリカの紛争と共生 国際フォーラム(ナイロビ)](2011年12月02-04日開催)

日 時:2011年12月2〜4日
場 所:ナイロビ Silver Springs Hotel

概要

poster

本プロジェクトでは、とくにアフリカ人研究者・実務者をまじえて国際的な議論を深めるために、「アフリカ紛争・共生フォーラム」を毎年アフリカ各地で開催することにしています。2011年度には、その第1回をナイロビで開催しました。

このフォーラムには、アフリカ5カ国(ケニア、エチオピア、南スーダン、ウガンダ、タンザニア)からそれぞれ二人ずつ合計10人を招へいし、日本からは本プロジェクトのメンバー6人が参加しました。参加者には、まえもって以下の三つの質問を送り、それに答えるかたちで2000~3000語のメモを用意してもらって、会議の当日には、それをもとにして議論をしました。

(1)アフリカの紛争解決や和解、社会的な癒しを実現することに貢献することが可能な、アフリカの潜在力とは何か
(2)アフリカの潜在力を活用した紛争解決・和解の試みの萌芽があれば具体的に示してほしい
(3)紛争処理における、普遍的正義を保証するための国際的枠組(たとえばICC)と、アフリカの潜在力を活用した上記の枠組とはどのような関係であることが望ましいか

1. What is African Potentials that can materialize conflict resolution, reconciliation and social healing?
2. Do you know any examples of trial in which African Potentials are utilized in conflict resolution and social healing?
3. In conflict resolution, international frameworks (such as ICC) are often utilized in attempts to secure universal justice. What kind of relations is desirable between African Potentials and such international frameworks? How can they be articulated?

プログラム(各発表の要旨を読むためには、タイトルをクリックしてください。
また、ここをクリックすれば要旨全部をまとめて読むこともできます)

December 2
18:00-19:00 Registration at Ostrich Conference Room
19:00-21:00 Welcome Dinner at the Hotel
December 3
9:00-9:30 Itaru Ohta (Kyoto University)
1. African Potentials, Customary Knowledge and Institutions, and Persistent Face-to-face Interactions
9:30-9:55 Eisei Kurimoto (Osaka University)
2. Limits and Possibilities of “African Potentials” in Conflict Resolution and Co-existence: Towards an Endogenous Approach of Peace- building
9:55-10:20 Gebre Yntiso Deko (Addis Ababa University)
3. African Peace Potentials: Insights from Ethiopia
10:20-10:35 Break
 
10:35-11:00 Kennedy Mkutu (United States International University)
4. African Potentials for Conflict Mitigation in and around Kenya
11:00-11:25 Fekadu Adugna Tufa (Addis Ababa University)
5. Assessing “African Potentials” among the Pastoral Somali and Oromo in Southern Ethiopia
11:25-11:50 Mikewa Arunga Ogada (Centre for Human Rights and Policy Studies)
6. A Research Note on the Work of Clerics-Led Peace Committees in Kenya’s Coast
11:50-12:15 Haji Abdu Katende (Makerere University)
7. The Strength of African Conflict Resolution Potentials
12:15-13:35 Lunch Break
 
13:35-14:00 Samson Wassara (University of Juba)
8. “African Potentials” from South Sudan
14:00-14:25 Toshimichi Nemoto (Japan Tanzania Tours Ltd.)
9. Peaceful 50 years of Tanzania
14:25-14:50 Simwana Said (Tanzania Center for Foreign Relations)
10. Tanzania Conflict Management within Great Lakes Region and the Horn of Africa
14:50-15:05 Break
 
15:05-15:30 Naoki Naito (The University of Tokushima)
11. Coping with the State and Non-state Actors: Lessons from Local Peace Building Practices in Kenya
15:30-15:55 Toru Sagawa (Kyoto University)
12. Relational Networks and Peace-Making in East African Pastoral Societies (South Omo)
15:55-16:20 Simon Monoja Lubang (University of Juba)
13. Conflict resolution and potential in African context
16:20-16:35 Break
 
16:35-17:00 Edward K. Kirumira (Makerere University)
14. Local Communities as Agency in International Conflict Conciliation Frameworks: Re-visiting African Potentials
17:00-17:25 Motoji Matsuda (Kyoto University)
15. Beyond Romanticization of Customary Mechanism of Conflict Resolutions: Notes for Further Discussion
17:25-18:00 General Discussion
December 4
9:30-11:30 General Discussion
 

議論された主要な課題

■本フォーラムの第一日目には、合計15の報告がなされたが、そのなかから以下の共通の問題点が浮き彫りになった。第2日目には、こうした課題についてさらに議論を重ねた。

(1)紛争解決のためには、国家が用意しているメカニズム、制度、枠組み(たとえば裁判所)があるが、それと、在来の・慣習的な・伝統的なメカニズムとは、どのような関係にあるのか(あるべきなのか)

  • 双方は、補完的、協力的なものなのか。在来のメカニズムは、国家の枠組みから、どれだけ独立し、自律的なのか。国家によって、公式に、法的な認可を受ける必要があるのか(そもそも、「法の支配」とは何か、「法」とは何か)
  • 国家や都市在住のエリートたちは、在来のメカニズムを利用したり、操作したりすることによって、より強力な権力をふるうことはないのか、それは不可避なのか(国際機関やNGOではたらくものたちは、どうか)
  • 国家が人びとを保護しないとき(国家が不在のとき)、在来のメカニズムは重要になると考えられるが、それはどのように活用できるのか

(2)在来のメカニズムがはたらくところ(空間)は、どのようなものか

  • それは、国家権力が不在であるような周辺地域において、コミュニティのレベルではたらくだけなのか
  • 在来のメカニズムは、(国家権力が不在である地域で、その)オルタナティブとして活用されるだけのものなのか、あるいは、たとえば国際紛争の解決のために活用できるような、もっと魅力的なものなのか(そうであれば、どのようにして?)

(3)「アフリカの潜在力」「アフリカの知識」「アフリカの知恵」「アフリカの哲学」「アフリカ的な実践」とは、何か。

  • それは、国家によって現実化するものか、より大きな地域によってか、あるいは、より小さなコミュニティや慣習を共有する集団か、あるいは個人によって現実化するものか。
  • もし、このように複数のレベルではたらくものであれば、異なるレベル間は、どのように接合することができるのか。
  • アフリカの潜在力は、人びとの日常生活にねざしたものと語られるが、常にそうでなければならないのか(政府やNGOの介入による草の根の平和構築プログラムをどう考えるか)

(4)グローバルで普遍的な枠組み・基準・価値とアフリカ的な枠組み・基準・価値

  • 在来の慣習には、「よいもの」と「わるいもの」があるのか、誰がそれを判断するのか、在来のメカニズムは人権侵害をおこすのか(特に女性と子どもたちに対して)、「政治的に正しくない」側面をどう考えるか
  • グローバルな枠組みでは個人が重視されるが、在来の枠組みでは集団が重視されることをどう考えるか(たとえば相互に争った二集団の和解を考えるとき、近親者を殺された個人の感情を重視するか、集団としての和平を優先するか、個人の不平不満をどうあつかうのか)

(5)伝統、慣習、あるいはジャスティス(正義?)、真実、和平といった概念をどのように定義するのか

  • 「伝統的(在来の)権威」「伝統的(在来の)メカニズム」とは、どこまで「伝統的(在来)」なのか(それは、コロニアル、ポストコロニアルに、ねつ造されたものではないのか)(ステレオタイプな伝統観をどうするか)(近現代の変容の問題をどうするのか)
  • 修復的正義と応報的正義
  • 顕微鏡的な(具体的な証拠をともなう)真実と対話的な(ともなわない)真実
  • ポジティブな平和(貧困、抑圧、差別などの構造的暴力がない状態)とネガティブな平和(戦争がない状態)
カテゴリー: 国際シンポジウム, 研究活動 パーマリンク